インプラントを利用したLOCATORオーバーデンチャーについて
インプラントは欠損した部分に固定式の歯を入れるだけでなく入れ歯の動きを抑え、咀嚼力を向上させて痛みを軽減し、様々な口腔機能の改善のために使われます。インプラントオーバーデンチャーとはインプラントを支持に作製した入れ歯のことです。
オーバーデンチャーの利点
- 入れ歯の安定感が増すため、咀嚼力が向上する
- 極度に吸収した骨にも適応可能
- 固定式の歯に比べて治療期間が短い
- 費用を抑えることができる
- 着脱が容易のため清掃性にすぐれている
- 新しく入れ歯を作らなくても現在使用している入れ歯を利用できる
オーバーデンチャーの注意点
- 1
- 入れ歯の安定感は増しますが、自分の歯と同じようにはなりません。
あまりに硬いもの(アワビ、ナッツ類、氷など)を食べ過ぎると、入れ歯が破損するまたはインプラントに過度な力がかかりすぎて、まれに脱落することもあります。
- 2
- 安定感が上がりますので、入れ歯の下に食べかすは入りづらくなりますが、食後は必ず外して洗ってください。インプラント周囲炎を発症する可能性が高くなります。
- 3
- 顎の骨は経年的に徐々に吸収し変化していきます。入れ歯を長期間装着していると、入れ歯と骨の間に隙間が生じ、入れ歯の安定が悪くなり、痛みや口内炎の原因となります。
そして入れ歯の安定が悪いまま使用していると、噛む力がインプラントに集中してきますので、ロケーターが緩み、プラークが沈着し、インプラント周囲炎を引き起こす原因にもなります。そのため入れ歯用材料で、その隙間を埋める処置(リベースといいます)を定期的に行う必要があります。
- 4
- メールは経年劣化しますので、最近入れ歯が今までより緩くなり外れやすいと感じた時は、メールキャップの交換時期に来ているかもしれません。早めに受診をお薦めいたします。
- 5
- 材質がレジンだけで作られている入れ歯は元来強度が不足しています。
食事をすると咬合力がインプラントを支点にしてオーバーデンチャーに加わりますので、入れ歯が破折することがあります。修理をおこなえば、使用できるようになりますが、頻繁に繰り返すようなら再製作することになります。
- 6
高齢者の患者様にはなるべくオーバーデンチャーをお薦めしております。
高齢者の方でも少数歯(1~4歯)の欠損であれば取り外しのない固定式が最適ですが、
多数歯~無歯顎の場合には- 治療期間が短い
- 固定式よりインプラントの本数が少なく、身体への侵襲が少ない
- 早く噛める
等の利点があるためです。
ただし、過去の疾患の経緯から、入れ歯の不具合から開放されて短い間でもいいから自分の歯のように噛みたい、というご希望をある患者様も来院されます。
そのようなご要望を踏まえつつ、当クリニックでは患者様が来院できなくなり、他の施設での治療する場合も見据えて、治療内容をご相談して参ります。無歯顎の場合のインプラント埋入本数
上顎・・・ 4~6本
下顎・・・ 2~4本
治療の流れ
- 1
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左右の犬歯相当部位にインプラントを2本埋入し、インプラントと骨が結合していることを確認した後、LOCATORインプラントアバットメントを歯肉粘膜の厚みに合わせて選択し装着します。
LOCATORインプラントアバットメントはカフの長さが1mm~5mmまで5種類揃っています。
- 2
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入れ歯の内面を削合し、ハウジングとメールを装着します。
メールは維持力が(弱)~(強)まで3段階あり、色分けされています。
口腔内の状況や患者様の好みなどを伺いながらメールの種類を選択いたします。
- 3
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入れ歯を口腔内に戻し、患者様に取り外しの方法を説明いたします。
協力:白鵬
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症例写真
症例1:60代女性
上下無歯顎で顎の骨がかなり吸収を起こし、入れ歯が動いてしまい、食事が取りづらいという主訴で来院されました。上顎には4本、下顎には2本インプラントを埋入しました。
これにより入れ歯の安定は向上し、食事が楽になります。
症例2:60代男性
上顎2本残っています。ここに2本インプラントを埋入し、天然歯2本とインプラント2本の合計4本を支えとする入れ歯を作製しました。
このように総入れ歯だけでなく、部分入れ歯の場合でも歯が欠損している部位にインプラントを使うことによって入れ歯の安定は向上します。
オーバーデンチャーの種類
オーバーデンチャーは他にも下記のような種類がありますが、いまはLOCATORtypeが主流です。
ボールアンカーtype
インプラント体に尖端がボールの形状をした維持装置を装着します。
入れ歯の内面にはリング状のゴムをつけ、入れ歯を安定させます。
ドルダーバーtype
埋入したインプラント体をバーで連結します。入れ歯の内面にはそのバーを包み込む形状を持つクリップを装着し入れ歯を安定させます。維持力は大きいですが、他のtypeと比べ清掃が難しい面があります。
上記2種類を使用中の患者様もLOCATORオーバーデンチャーに変更することが可能です。