抜歯即時埋入の流れ

抜歯即時埋入とは

抜歯即時埋入とは抜歯と同時にインプラントを埋入する方法です。

1.術前

40代女性です。右上1番の歯が動いて、上手に食事ができないということで来院されました。
CT診断で歯の根が破折しており、歯を残すことはできないことを伝えました。
抜歯後入れ歯は希望せず、インプラントまたはブリッジについてそれぞれの長所と欠点について説明したところ、インプラントを希望されたため、スプラインHAインプラントで抜歯即時埋入を選択しました。
静脈内鎮静法は用いず、通常の局部麻酔で行いました。

1.術前

術前の口腔内写真です。
上の前歯のインプラント治療です。患者さまのQOLを下げないようにするために短期間で治療を終えることが大事です。

CTによる術前のインプラントシュミレーション画像

これはCTによる術前のインプラントシュミレーションです。
インプラント埋入予定部位の骨の太さ、長さ等からCTに登録済みのインプラントから最適なインプラントを選択し、重ね合わせます。(紺色の棒状したものがインプラントを表しています。抜歯即時埋入インプラント手術ですから、直径3.75ミリ、長さ13ミリのスプラインHAインプラントを使用することにしました。)

ここでCT画像で確認すべき点はさまざまありますが、基本的な点としては

  1. 1. 骨の厚さ(黄色い2つの矢印にはさまれた部分)とインプラントの太さのバランスは的確か
  2. 2. 頬側の骨(赤い丸の部分)と舌側の骨(青い丸の部分)の形状の確認
  3. 3. 抜歯予定歯の歯根の形状
  4. 4. 気になる画像の存在

等を診査診断します。これを患者様とカウンセリングルームでご一緒に画面を見ながらわかりやすく御説明いたします。

2.インプラント1次手術

インプラント埋入

抜歯即時埋入ですので、通常のインプラント手術と異なり歯肉は切開いたしません。切開しないので術後の痛みがほとんどありません。
インプラント手術中は10倍の拡大鏡下で抜歯後インプラントの結合を妨げる歯根破折周辺の不良肉芽並びに炎症部分を掻爬します。
CT診断で使用予定のスプラインHAインプラントのサイズに合わせてインプラント窩を所定のドリルを用いて形成したあとインプラントを埋入し、インプラントの周囲には人工骨を填入します。

  • インプラント埋入

    周りの歯肉を傷つけないよう丁寧に抜歯します。感染を防ぐため、抜歯窩を時間をかけ掻爬します。

  • インプラント埋入

    インプラントを埋入するため、インプラント窩を5種類のドリルで形成します。

  • インプラント埋入

    スプラインHAインプラントを埋入します。

  • インプラント埋入

    骨の再生を促すようインプラントの周りに人工骨を充填します。(矢印の部分)

インプラント埋入直後のCT画像

インプラント埋入直後のCT画像です。
頬側の骨(赤い丸の部分)と舌側の骨(青い丸の部分)のほぼ中央部分にインプラントが埋入できたのがわかります。
当クリニックでは術中や術後に必ずCTを撮影しています。この点がCT完備しているクリニックの優位の点だと考えています。

この埋入直後のCT画像で

  • 1. インプラントの埋入角度、深さ
  • 2. インプラントの周囲の骨の厚みは十分確保されているか

等が術前の治療計画通りにおこなわれているか確認してから、インプラント手術を終了します。

仮歯(プロビジョナル)の装着

インプラント埋入後、あらかじめ作製しておいた仮歯をインプラント窩に装着します。
通常抜歯をしてインプラントを埋入したため、縫合すると思われると思いますが、自然な仕上がりにするために審美領域(前歯の部分)では縫合いたしません。
縫合すると歯肉の形が崩れるからです。
このままインプラントが骨と結合するまでの3ヵ月間(個体差があります)待ちます。

  • 仮歯(プロビジョナル)の装着

    前側の部分です。
    前もって歯型をとり作製しておきますので、インプラント手術後その日のうちに仮歯が入ります。

  • 仮歯(プロビジョナル)の装着

    裏側の部分です。
    インプラントを埋入した両側の歯の裏側にワイヤーを通してありますので外れにくい構造になっています。

3.インプラント2次手術

インプラント埋入3ヶ月後 インプラントと骨がしっかりと結合していることをぺリオテスターという装置で確認します。
ぺリオテスターで数値が0~マイナス7までの数値が表示されれば、被せ物を入れるための型どりを行います。
個人差がありまして、万が一上記の数値が表示されない場合には、もうすこしお待ちいただきます。

4.インプラントの上部構造装着

インプラントの被せ物の材質はジルコニアセラミックまたはオールセラミックが使われます。
特にジルコニアセラミックは大変強度がありプラークがほとんど付着せず、生体親和性にも優れています。

インプラントの上部構造装着

抜歯即時埋入の利点は歯肉を切開しないため、歯肉の形状が抜歯前と比較しても変化せず、審美性に優れた上部構造を作ることができます。

抜歯日にインプラント埋入・被せ物を装着する、即時埋入・即時荷重とは

一般的なインプラント治療の場合、抜歯後からインプラント埋入まで数ヶ月、さらにインプラント埋入後から仮歯装着までも数ヶ月待つ必要がありました。しかし患者様にとっては、1日でも早く治療を終え、噛めるようになることが重要です。

当院では即時埋入と言って、抜歯と同時にインプラントを埋入する治療法を行なっております。またその日に仮歯の装着(即時荷重)まで行います。
つまり、抜歯した日に仮歯の装着まで行うことが可能となります。

即時埋入・即時荷重は様々なメリットがありますが、通常とは異なる知識や設備を要します。また高い技術を要する治療のため、対応している歯科医院は限られております。

即時埋入・即時荷重のメリット

1、治療期間の短縮

通常のインプラント治療の場合、上顎で4ヶ月・下顎で3ヶ月は治療期間を要しましたが、即時埋入・即時荷重を導入することで、上顎・下顎どちらでも2ヶ月前後で完了します。

治療期間・通院回数を少なくすることで、患者様の身体的・時間的負担を軽減することで出来ます。

2、QOLの向上

インプラント埋入後、顎の骨に定着する間(約3〜5ヶ月)は歯がない状態でした。 しかし即時荷重(インプラント埋入日に仮歯を装着)を導入することで、治療期間中のQOL(食事・見た目など)が向上します。

※即時荷重を行う場合、検査機器でインプラントの固定度合を確認しております。固定度合はすべて数値化され、70以上の固定値があれば問題なく即時荷重が可能です。

3、腫れ・痛みが少ない

即時埋入は抜歯した穴をそのまま活用するため、切開や剥離の必要がなく、腫れや痛みを少なくできるメリットがあります。
また抜歯と同時にインプラントを埋入するので、顎骨の吸収(※)を抑える効果もあります。

※インプラントを長持ちさせる上で、顎骨の幅や厚みはとても重要です。抜歯をしてからインプラント埋入を待っている数ヶ月の間に、顎骨が吸収されてしまうことがあります。

即時埋入・即時荷重が行えないケース

骨が柔らかい場合や厚みが足りない場合、通常のインプラント(骨が安定してから行う)治療で行う必要があります。
当院では事前に骨の厚みや噛み合わせを検査した上で、治療方法を決定しております。

即時埋入・即時荷重の費用

一般的に即時埋入・即時荷重は別料金が発生するケースが多いですが、当院では通常のインプラント治療と同一料金で行なっております。

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