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上の奥歯の骨が薄い症例でのショートインプラントの有効性について
上顎奥歯のインプラントの難しさは、骨の厚みや上顎洞粘膜さらには
上顎洞の形状等様々な要因が重なり合っていることにあります。
特にインプラントを埋入しようとしても、インプラントの長さより
骨の厚みが足りない場合には、その不足分を人工骨で補填することに
なります。ただその差が1ミリ~3ミリ程度であれば、人工骨を補填
することはしません。理由としては生理的に自然と骨がインプラント
周囲に再生する能力があるからです。しかしその差がさらに
大きくなると人工骨を使用することになります。
ただ補填する人工骨量が多くなるほど、上顎洞粘膜が破損するリスク
が高くなります。上顎洞粘膜は通常では卵の膜のように薄いのですが
歯周病に罹患した歯または不十分な根管治療の歯の影響で、脆弱に
なりやすく破損することが多くなります。破損すると補填した人工骨
は、上顎洞内に散らばるため上顎洞炎を併発するリスクが
高くなります。上顎洞炎を起こすと、補填した人工骨や埋入した
インプラントはいったん除去することになり、数か月待ってから
手術は最初からやり直しです。今まで様々な方法が開発されて
きましたが、これ!というものはありませんでした。そこに
新しくショートインプラントの治療方法が現れました。人工骨は
一切使用しません。またショートインプラントのため、従来型の
インプラントと比較して上顎洞内にインプラントが入る量は
すくないため、上顎洞炎を起こすリスクを大きく下げることが
できます。ショートインプラントと聞くと、「短い?」と気にされる
方がいると思いますが、幅が最大8ミリありますのでその心配は
ありません。さらに従来のインプラントに比べてインプラントの周囲
の骨の吸収を抑えることが期待できます。