記事タイトル
左下骨が足りない部位に骨を作らずにインプラントを1本埋入
1、術前診断、治療計画
以前に上の奥歯にインプラント治療をされてから
定期的にメンテナンスを受診されてきた患者様です。
数年前に左下奥歯にたまに違和感を感じて
噛むことができないくらい痛んだ時が
あったようです。
(多分その時に歯の根が割れたと想像できます)
CT撮影を行ったところ
左下奥歯にはっきり歯の根の部分に
亀裂があることが確認できました。
歯が割れたまま放置しておくと
その周りの骨は徐々に吸収していきますので、
抜歯をお勧めしましたが、
頻繁に歯が痛むわけでもなく
歯茎が腫れるわけでもないので、
なかなか決心がつかないようでした。
そのまま数年、メンテナンスを続けていきながら、
経過をみていきましたが、
とうとう抜歯をしなければならない時期になり
抜歯の後、インプラントを希望されました。
歯の根が割れていたため,長い間に
骨の吸収が進んでいたため
神経までの距離が短くなり
通常の長さのインプラントを埋入することが
困難になりました。
このような状態でインプラントを入れるには
2つの方法がります。
1、GBR法を行い、骨の造成をおこない、通常の長さのインプラントを入れる
2、GBR法は行わずショートインプラントを用いて
吸収した骨の中にインプラントを入れる。
1の方法については、
長いインプラントを入れることはできても
GBR法は術後腫れて痛みが出やすく、作った骨も長期間の間に
吸収してくることもあります。
2の方法については
ショートインプラントとはインプラントの長さが8ミリ以下で、
通常の長さ(10ミリ~12ミリ)のインプラントとほぼ同じ程度の
成功率であることがわかっています。また短いインプラントを
使用することで、神経の損傷を避けることができます。
以上の理由により
抜歯した窩が歯肉で覆われるまで
抜歯後1~2か月後
待ってから
サイズは
長さ8ミリ×太さ5ミリのスプラインHAインプラントを
使用することに致しました。
2、インプラント1次手術、2次手術
抜歯から約2か月を過ぎて
インプラントを埋入していきます。
しかし抜歯後2カ月では
インプラントを入れるだけの骨は
まだ十分にできていませんので、
このような状態の骨には
チタンインプラントより
HAインプラントが適しています。
インプラントは埋入する骨の状態によって
使い分けが大切です。
そして抜歯した窩には
人工骨を詰めておきます。
人工骨は何の意味で使うのかといいますと、
インプラントの周りに血液を留めておく役目があり、
まだ十分にできていない骨の再生を促す役目をしています。
画像1の説明
歯を抜いて1~2か月経過した状態です。
骨の厚みがない場合には歯ぐきがしっかり治るまで待ちます。
画像2の説明
インプラントを埋入しているところです。
3、被せものの装着、メンテナンス
今回の症例のような一番奥歯のインプラントは
1、顎の関節に一番近いので、噛む力が強く加わる。
2、インプラントの被せもののため、天然歯とは形状が異なるうえに
奥歯のため清掃がむずかしい
という2点を十分注意する必要が有ります。
1、については
▲メンテナンス時の必ずかみ合わせの確認を行う
▲TCH(歯牙接触癖)を持っている方は、それをしっかり認識してもらい
日頃から気をつけてもらう
▲被せものの形状を天然歯より小さくし、過度な噛む力が加わることを防ぐ
2、ついては
▲被せものを清掃を重視した形態に変更する。
▲定期検診を欠かさない。
上記以外
まだまだ気をつけなければならないことは
個人個人異なり、ありますが、
インプラントは虫歯にはなりませんが、
お手入れが悪くなったり、噛む力が過度に加わると
インプラント周囲炎という歯周病と同じように骨が吸収を
起こして、治療が煩雑で長期に渡ることがありますので、
必ず定期検診を受けてください。
画像3の説明
インプラントの被せものを入れた状態です。
インプラントの被せものはセメントで接着するのではなく
インプラント周囲炎の予防などを考慮し
なるべくネジで固定しています。
そのためかみ合わせの部分に直径3ミリの穴が開いている状態で
完成してきます。その穴からネジで被せものを固定し
あとは合成樹脂で埋めておきます。
検査代
CT撮影 12000円+税
その他保険負担金がかかります。
相談料
無料
治療費
インプラント1本 35万円+税
期間
4~5か月程度